現代の東京に舞い降りた36歳の魔法少女★『丸の内魔法少女ミラクリーナ』
- sw2406
- 1月15日
- 読了時間: 5分

丸の内でOLをしている36歳の彼女は、実は裏で悪と戦う魔法少女だったのです――。
目次
あらすじ
丸の内でOLとして働く36歳・茅ヶ崎リナは魔法少女である。
会社で起こるストレスフルな無理難題も、相棒のポムポムと魔法のコンパクトとでさらりと解決。たまに親友のレイコと居酒屋でだべり、エイヒレつまみに酒かっくらう時もあるけれど、魔法少女の前に36歳の仕事に明け暮れる社会人だもの、しょうがないよね?ある日そのレイコが彼氏にDVされ家に駆け込んできた。そしてまたそのリナの家に「レイコと別れたくない」とのたまうDV彼氏が乗り込んできた。そしてあれやこれやの問答の挙句に、レイコの彼氏とリナは一緒に魔法少女ごっこするはめになってしまった。
私たちこれからどうなっちゃうの!?

※なおこの作品は短編集の中の表題作品で、この作品の他に3作品同時収録されている。
(「秘密の花園」「無性教室」「変容」の三篇)
出版社・ページ数・価格
出版社:KADOKAWA
ページ数:216ページ
価格:1,600円(税別)
著者情報
著:村田 沙耶香(むらた さやか)
2005年2月『授乳』で講談社よりデビュー(第46回群像新人文学賞優秀作選出)
それ以降もコンスタントに作品を発表。
2016年に『コンビニ人間』で第155回芥川龍之介賞を受賞する。
みどころ
大抵の少女が一度はあこがれるであろう魔法少女。その魔法少女が丸の内のオフィスの中に存在した。その魔法少女は会社を退社すると、友人と大衆居酒屋で、かつて魔法少女仲間だった親友と雑談にふける。彼の愚痴をきいたり黒歴史で親友をいじったり。現代の魔法少女は大変なのだなと思いつつ、でもなんだかんだ楽しそうだと彼女のことを微笑ましく感じた。しかし話は魔法少女は大変だけど楽しいというところからぶっとび、何故か親友レイコのDV彼氏とリナが一緒に魔法少女となって町をパトロールすることになる。読んでても何で?!と思ったが提案した方もたまげた顔をしているところをみると少々滑稽であった。まぁ本当に滑稽なのはその提案を受け入れたレイコの彼氏なのだが。しかし彼の滑稽さは魔法少女になるという提案にうなずいた時以上にあらぬ方向に暴走していく。その暴走の果てに至る結果ははたして?
読了時間
3時間程
評価
読みやすさ
余計な癖もないさらりと読ませてくれる村田沙耶香節で、おまけに短編集なため読みやすい。特に表題作品は主人公リナと親友レイコ、その彼氏正志の中心面子のみ覚えていれば何の問題もない。あとはリナの親友?魔法の国からきたポムポムを忘れなければ完璧。
おもしろさ
始まりは魔法少女小説らしい始まりで、ちゃんと小学校の時に作った設定を日朝の某魔法少女ばりのオープニングのごとくかわいく「ミラクリーナはがんばります!」で締めくくる。
しかし次のページでは現代に戻り、これは小3で考えた設定だとあかし、セリーヌのバッグの中にしのばせたポムポム(という名のぬいぐるみ)に話しかける。小3からのつきあいのぬいぐるみをセリーヌのバッグ&フルラのポーチにいれるという現実的な36歳女性のアイテムと小学校3年生が買ったぬいぐるみというアイテムがミスマッチでおかしみと同時にかわいらしさを感じた。
そもそも当然だがリナは本当に空を飛んだり魔法を人にかけたりできるわけでなく、ごっこあそびが高じて36歳になってもやめるタイミングを見失っただけの普通のOLである。唯一リナが使う魔法は割と現実的で、多分みんなそれを「魔法」とは呼ばないし「呪文」も唱えないし「ぬいぐるみ」に話しかけたりはしないけれど、一割ぐらいの人は心の中でやっている人もいるのではないだろうか。彼女がやっていることはまぁ少々変わってはいるが、自分で自分に魔法(暗示)をかけて、自分のことを良い方向に奮い立たせてるにすぎないのだ。
「魔法少女になって27年のベテラン」の彼女の生きざまを一度覗いてみて欲しい。

どんな人におすすめ?
・かつて魔法少女にあこがれた女性に
・今も自分は魔法少女だと自負している女性に(~魔法のコンパクトを添えて~)
総括・感想
対象年齢
働く大人から
総合評価
★★★★★
感想
この本が、私がいまだに「人生でもう一度記憶をなくして読み直したい本ベスト5」に入れるほど好きな「コンビニ人間」を書いた作者が書いたものなのか?と最初びっくりしたくらい、これもまたインパクトのあるタイトルの本で、「コンビニ人間」をこよなく愛する私はこの本を読むべきか読まざるべきか迷ったのだが、著者を信じて読んでみて正解だった。
36歳の魔法少女って……最初は大人になりきれない社会人女性の葛藤か何かなのだろうかと思っていたのだが、あらすじをみると大概ぶっとんでいて、あらすじだけでもわくわくと笑いが同時にこみあげてきた。そして本編もそれを裏切らなかった。どころか、すっきり爽快なお話で、すっきり爽快な終わり方であった。最後のレイコとリナの会話を聞きながら、バッグの中のポムポムもきっと幸せに笑ってることだろう。私もとても清々しい思いで本を閉じることができた。

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