“運命”の出会いを信じますか?タイトルの絶妙さ『陽だまりの彼女』
- sw2406
- 2月10日
- 読了時間: 5分

私は主にミステリものを好んで読んでいる。なので後々タイトル自体が伏線となっている小説にもよく出会う。しかしそれ以外のジャンルでは初めてお目にかかった。自分からここで蛇足的に書いておいてなんだが、最初はあまり考えずに読むのがよいと思う。
目次
あらすじ
中学生時代にいじめられっ子だったクラスメイトと、仕事のクライアントとして10年ぶりに再会した浩介。冴えない中学生だった彼女。浩介が勉強を教えたり、いじめからかばっていた彼女は、仕事ができるキャリアウーマンになっていた。運命的な出会いから徐々に距離が近づいていく二人。そのままふたりで人生を歩いていける、そう予感させたのもつかの間、彼女に訪れる異変が―――。

出版社・ページ数・価格
出版社:新潮社
ページ数:352ページ
価格:737円(税込)
ジャンル:恋愛小説
著者情報
著:越谷 オサム(こしがや おさむ)
年、2004年 新潮社より『ボーナス・トラック』でデビュー。
主な著書:「陽だまりの彼女」「この部屋で君と」「たんぽぽ球場の決戦」他
受賞歴:「陽だまりの彼女」啓文堂主催「2011年 おすすめ文庫大賞」を受賞。
みどころ
中学生のときは、行動も何もかもトロくて勉強もできなかった仲の良い同級生が、10年後に偶然に仕事の場で出会うことになる。しかもどんくさかった彼女はとてもスマートな大人の女性になっていた。無事に心を通わせるようになる二人。全然変わってしまったと思われた彼女は、やっぱりあの時の彼女で、ポンコツな部分も残している。そこがまた中学生時代を思い出させてくれる。あの時の彼女のままだと。
正直半分読むまで退屈でこのままこの二人のいちゃこら見せられるだけなら本を閉じようと思っていた。変化が訪れるのは後半、物語が少しずつ彼女についての謎に触れ始める。
それまでに伏線らしきものは散りばめられてはいたし、全部回収できたのはよかったけれど、いきなりの展開に純粋な「恋愛小説」を求めて読み始めた人は困惑するかもしれないなと思う。それでも浩介と彼女が互いに思いあう姿は本物で、彼女が彼女のままであるのも本当で。不器用ながら自分の想いを曲げず真っすぐに自分の人生を歩いてきた姿には、とてもかわいらしくいじらしいと、思わずその頭をなで繰り回してあげたくなった。

読了時間
4時間程
評価
読みやすさ
主人公の浩介の一人称で書かれた物語。一人の女性と出会い恋に落ちて、それから――。
というお話なので難しいところもなく読める。自分は普段恋愛小説を読まないためか、前半のいちゃいちゃでお腹いっぱいになり途中でやめてしまおうかと思ったほど、生粋の恋愛小説。会話文だとか言葉選びだとかそういう点で読むのを断念することはないが、私のように恋愛小説に抗体・適性がない者が読むと、ダレそうなくらい砂糖いっぱい入ってるのでご用心。
おもしろさ・共感度
発行が2008年4月の小説であるが、それを差し引いても主人公の男の考え方とかやることがなんともモヤモヤする。2000年代って昭和じゃないですよね?と思わずネットで調べてしまいそうになった。このもやもやは対象が異性であるせいか?しかし最近読んだ小説でこのような考えを持った覚えもない。主人公が20歳半ばの若造なせいか?いやいやこのモヤモヤは物語全体に対して感じてるのでそういうことでもなさそうだ。全体のままごと感と、あー作者が書きたかったのはここなんだろうなーと透ける感じでも冷めてしまう。
最後も、もうある程度提示された伏線らしきもので「あ、そうですか」と特に驚きはなかった。最後もさくっと終わってくれてよかったと思うのだけれど、しつこくしつこく確かめる様がもうわかってるから終わりませんか?と枠外から主人公に提案してしまいたくなる。
ここまであけっぴろげに書くとわかっていただけるかと思うが、多分不幸なことに私はこの物語ととことん合わないのだろう。もっとこの物語を素直に味わえる感性が欲しかった。
世界観
私はこの小説のことを「生粋の恋愛小説」と記したが、少々のファンタジーが混入している。なので、生粋という言葉は訂正すべきかとも考えた。しかしこれはもうまぎれもなく恋愛小説と分類するしかないと私は思っている。男女が心身ともに互いに愛し愛される、それを軸に物語がすすむのであればそれはもう「恋愛小説」以外の何物でもないだろう。
外ではこの小説についての定義・ジャンル分けが少々チクチク言われているのを見たことがあるが、エッセンス程度のファンタジーなら許容して、彼と彼女の行く末を見守るのが粋というものだ。

どんな人におすすめ?
・恋愛小説が好きな方
・いちゃいちゃに飢えていてキュンキュンしたい方
総括・感想
対象年齢
小学生から
総合評価
★★★☆☆
感想
恋愛小説など読むのはいつ以来だろうかと指折り数えようとしたが、親指すら曲がらない。
こんな人間が読む,ほぼほぼ初体験の「恋愛小説」ゆえ、評価の偏りがすごいのは自分で自覚している。恋愛一辺倒で物語を成立させるのは難しいのか?とそこまで考えが及んでしまったが、単純に私とこの物語が合わなかったのだと思いたい。
それでも、彼女の一途はかわいらしいと思えたし、彼や友達、親のことを思う心は真っすぐで、愛くるしかった。ひたむきな努力が報われてよかったと思えた。この物語の続きはきっと、彼や家族、彼女にとって幸せなものになると信じている。

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